書誌情報:青土社,163頁,本体価格1,400円,2008年12月25日発行
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金融危機真っ盛りの2008年10月の,朝日カルチャーセンターでの対談とあらたに語りおろした対談をまとめたもの。金融危機の歴史的把握,アメリカの金融センター化の背景と仕組み,金融危機後の資本主義のゆくえを論じている。
通貨先物市場が経済的な合理性からできたのではなくマルクス主義とケインズ主義への反発が背景にあったとする指摘がある。北朝鮮によるとされる偽ドル事件はCIAの策略であったというのは確定情報なのだろうか。たんに評者の情報不足なのか。
GDPに占める輸出の割合は8%であり,日本経済が貿易依存というのは数字の上では真っ赤な嘘というのは評者の盲点だった。輸出で稼いでいる40社ほどの大企業に圧倒的多数の中小企業がぶらさがった構造が国内取引の割合を高め,内需を増やし,貿易依存比を小さくさせているという。ここが産業構造転換論と結節することになる。
経済的ナショナリズム,経済的ナショナリスト宣言(ヨーロッパの経済的パトリオティズム)が本書の結論だ。アメリカ中心主義から(東)アジア重視もいまひとつの提言と読める。
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