356松岡健一著『医学とエンゲルス――社会医学の立場から――』

書誌情報:大月書店,382頁,本体価格4,500円,2009年5月8日発行

医学とエンゲルス―社会医学の立場から

医学とエンゲルス―社会医学の立場から

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臨床医としての視点からまとめたエンゲルスの医学論・科学論だ。社会医学からみた『イギリスにおける労働者の状態』,『自然の弁証法』,『反デューリング論』のノートは,住居と健康,労働災害・職業病・過労死,公害問題に繋がり,生命起源論,心霊論におよぶ。マルクスエンゲルスと関係のあった医師・医学者群像は医師ならではの抽出だ。なかでもよく知られているクーゲルマン,ウィルヒョウ,ナイチンゲール評は,書簡を含む『全集』からの再構成である。
マルクスの病歴と死亡原因をまとめたことも本書の独創性だろう。肝臓病,ヨウ(carbuncle),頑固な不眠症,軽症の脳卒中,慢性気管支炎,肋膜炎といった中年以降の病気から,「慢性気管支炎とその合併症」――エンゲルスによれば「肺腫瘍からの出血」――による死因の推定まで記述している。