365瀬川正仁著『若者たち――夜間定時制高校から視えるニッポン――』

書誌情報:バジリコ株式会社,285頁,本体価格1,600円,2009年6月23日発行

若者たち-夜間定時制高校から視えるニッポン

若者たち-夜間定時制高校から視えるニッポン

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ベタなタイトルと対照をなす衝撃的な内容に圧倒される。夜間定時制高校という日本の教育システムの辺境での現状はややもすれば特殊,例外とも受け取られる。だが,辺境ゆえに教育が孕む問題点を凝縮している。
南丘陵高校夜間定時制(仮名)は実在する夜間定時制高校である。唯一の居場所である夜間定時制高校,リスカリストカット)を繰り返す高校生,児童虐待(性的,身体的,精神的,育児放棄)の世代間連鎖,中学時代からつづく不良グループ,16歳で母になる現実,人生をつづけるための乗り物としての夜間定時制,など最底辺に位置する高校は見事に現代の縮図だ。
ヤンキー系の生徒,小中学校時代に長期間不登校だった生徒,外国にルーツを持つ若者,様々な障害を持った生徒,勉強熱心な高齢の生徒,昼間仕事をして夜学ぶ伝統的な定時制高校生。
厳罰化や道徳教育を強化しようとも,レールから外れてしまった若者たちには無効だ。「炭鉱のカナリア」にほかならない若者たちにいま注視しなければならない。「生徒を助けないような先コウは,先コウっていわねえんだよ」(『ごくせん』)。教育にかかわる人たちに突きつける課題でもある。