815城繁幸著『若者を殺すのは誰か?』

書誌情報:扶桑社新書(127),215頁,本体価格720円,2012年11月10日発行

若者を殺すのは誰か? (扶桑社新書)

若者を殺すのは誰か? (扶桑社新書)

  • 作者:城 繁幸
  • 発売日: 2012/11/01
  • メディア: 新書

  • -

「30代と60歳以上の社会保障等の世代間格差は6077万円」の惹句が踊っている。社会保障全体の生涯をつうじた純受益では,終身雇用に胡座をかいてきた60歳以上と30代とでは6000万円以上の格差が生じる。若者を踏み台にする既得権益に大胆にメスを入れろというのだ。賦課方式から事前積立方式にしたうえで各種年金の一元化(「維新八策」の「日本再生のためのグレートリセット」と同じ)を実現し,「老人至上主義の国」(37ページ)から脱却しようという。
これを切り口にして,終身雇用や労働保護規制の撤廃,社会保障労働組合,さらには政治という既得権への挑戦に若者の未来を託す。小泉政権や橋下維新の会のもつ強力なリーダーシップこそ必要だという。既得権を持つ者とそうでない者との対立軸をもとに,そうでない者である若者が小泉や橋下を選べという著者の願いがあるようだ。
年金カットや医療費自己負担増を含む社会保障ゼロリセットというシナリオの成否は,若者世代からの異議申立,若者自身の改革への参加(=選挙)による。その見立ては別として処方箋は正しい。