268社会教育調査の概要

文科省の社会教育調査が公表され(2009年11月12日,→http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa02/shakai/index.htm),これを受け「小学生年35.9冊借りた」との見出しのもと,過去最高となったこともあり,「図書館は身近な公共施設で,子どもへの読書活動が週刊として定着しつつある」との文科省のコメントを報じていた(日経新聞,2009年11月13日付)。また,朝日の「between 読者とつくる」では「図書館を活用していますか?」で,公立図書館がこの10年で24%増えたことやサービスの多彩さを報じていた。この記事では「日本では,公立図書館の数が伸びる反面,専任職員はこの10年で16%の減。正職員の司書不在の図書館が36%もある」とし,総じて「日本は遅れている」とまとめている。
社会教育調査は,社会関係施設数,職員数,学級・講座の状況,諸集会(講演会,文化・体育事業等)の状況,施設利用者数などの調査であり,図書館の数や利用者数の調査はこの調査のひとつにすぎない。日経の記事は図書館関係の調査をとくに抽出したものである。
社会教育調査を一見すればわかるように,図書館総数がはじめて3,000を超えたことだけが特徴ではなく,ここ10年間で図書館,博物館,博物館類似施設及び文化会館が一貫して増えている。また,図書の貸出業務の実施状況をみると,たしかに,登録者数,帯出者数,貸出冊数が増え(後2者は過去最高),うち児童(小学生)の登録者1人当たりの年間利用回数も,6.7回(前回比0.4回増),貸出冊数は35.9冊(同2.9冊増)と増えてはいる。しかし,児童(小学生)の登録者数,帯出者数,貸出冊数とも減っていることをも冷静に見る必要がある。職員数の動向を見ても,社会関係施設が「ハコモノ」から脱したとか脱しつつあるとかとは言える水準ではない。社会関係施設増→関係職員数増,しかし,専任関係職員減はさびしい数字ではある。
「文化経済学」の講義資料を兼ね,社会教育調査から項目を整理しまとめたものが下記である。項目の表出やグラフについては社会教育調査に詳しい。

  • 1 施設数
    • (1) 種類別施設数
      • 総数(2008年10月1日現在):9万5千施設(前回調査2005年度とほぼ同様)
      • 種類別の特徴(1):図書館,博物館,博物館類似施設,女性教育施設,文化会館で過去最高(1996年度以来一貫して増加しており,特に図書館は,今回初めて3,000施設を突破し,博物館類似施設については,調査対象となった1987年度と比較して約3倍となっている)
      • 種類別の特徴(2):公民館,青少年教育施設及び社会体育施設で減少
      • 種類別の特徴(3):各施設のうち最も多いのは,社会体育施設の4万8千施設で,次いで民間体育施設及び公民館1万7千施設の順
      • 種類別の特徴(4):前回比で最も増加したのは,民間体育施設の5百施設増(伸び率3.2%),次いで女性教育施設及び図書館の2百施設増(同107.7%(女性教育施設)),(同6.2%(図書館))の順
    • (2) 種類別指定管理者別施設数
      • 指定管理者制度導入比率(1):公立の社会教育関係施設(55,090施設)のうち,12,900施設(23.4%)(前回調査比9.1ポイント上昇)
      • 指定管理者制度導入比率(2):最も割合が高いのは文化会館の50.2%で,次いで青少年教育施設の33.5%
      • 指定管理者制度導入比率(3):組織別の指定管理者の状況では,最も多いのは「民法第34条の法人」で5,973法人,次いで「その他」3,232団体,「会社」2,772社の順
    • (3) 種類別博物館数・博物館類似施設数
      • 博物館数:美術博物館が最も多く,449施設(博物館総数に占める割合36.1%),次いで歴史博物館433施設(同34.8%),総合博物館149施設(同12.0%)の順(前回比で最も増加したのは,歴史博物館の28施設増(伸び率6.9%),次いで美術博物館26施設増(同6.1%),野外博物館5施設増(同38.5%)の順)
      • 博物館類似施設:歴史博物館が2,892施設(博物館類似施設総数に占める割合63.9%)で最も多く,次いで美術博物館652施設(同14.4%),科学博物館380施設(同8.4%)の順(前回比で最も増加したのは,歴史博物館の97施設増(伸び率3.5%),次いで総合博物館18施設増(同6.9%),科学博物館14施設増(同3.8%)の順)
    • (4) 種類別体育施設数
      • 地方公共団体設置の社会体育施設:多目的運動広場が7千1百施設(社会体育施設総数に占める割合14.8%)で最も多く,次いで体育館6千8百施設(同14.2%),野球場・ソフトボール場6千2百施設(同13.0%)
      • 民間体育施設:ゴルフ場が2千3百施設(民間体育施設総数に占める割合13.3%)で最も多く,次いでゴルフ練習場1千8百施設(同10.4%),水泳プール(屋内)1千7百施設(同9.8%)の順
  • 2 職員数
    • (1) 施設等別職員数
      • 都道府県・市町村教育委員会(社会教育関係)及び社会教育関係施設の職員;総数で53万2千人(前回調査比で微増)
      • 種類別:都道府県・市町村教育委員会(社会教育関係),公民館及び民間体育施設で前回調査比で減少,図書館,博物館,博物館類似施設,青少年教育施設,女性教育施設,社会体育施設及び文化会館で過去最高
      • 内訳:専任22万8千人,兼任8万3千人,非常勤22万1千人となり,前回調査比で専任1万2千人減,兼任微増,非常勤2万7千人増(非常勤職員には,指定管理者の職員,常勤的に勤務しているパート職員及び地方公務員法第22条による臨時職員を含む)
      • 施設別:民間体育施設の22万人で,次いで社会体育施設11万4千人,公民館5万3千人の順で,社会教育関係施設1施設当たりの職員数は,民間体育施設が19.7人で最も多く,博物館14.4人,文化会館10.6人の順
      • 専任の割合:都道府県・市町村教育委員会が69.2%で最も高く,次いで博物館60.5%,民間体育施設58.4%の順で,社会体育施設が13.6%と最も低い
    • (2) 指導系職員の状況
      • 専任,兼任,非常勤の合計:最も多いのは民間体育施設における指導系職員の5万4千人で,次いで公民館主事(類似施設における指導系職員を含む。)及び図書館司書が1万5千人の順(前回比で,最も増加したのは,社会体育施設における指導系職員の3千1百人増(伸び率32.8%)で,次いで図書館司書の1千8百人増(同14.2%),民間体育施設における指導系職員の8百人増(同1.3%)の順で,減少したのは公民館主事(類似施設における指導系職員を含む。)は2千4百人減(同△13.4%),次いで社会教育主事は1千1百人減(同△27.1%))
      • 職員数に占める割合:21.5%であり,前回調査と比較すると0.1ポイント上昇し,種類別にみると,図書館司書の44.8%が最も高く,次いで青少年教育施設における指導系職員34.5%,公民館主事29.0%の順
      • 女性指導系職員数:民間体育施設が2万7千人と最も多く,次いで図書館司書の1万2千人,公民館主事6千3百人の順で,指導系職員に占める女性の割合は,図書館司書の85.1%が最も高く,次いで女性教育施設84.9%,図書館司書補82.9%
  • 3 学級・講座の状況
    • (1)施設等別の学級・講座数
      • 学級・講座(一定期間にわたって,組織的・継続的に行われる学習形態)の実施件数:公民館47万件(伸び率9.7%),都道府県・市町村首長部局16万6千件(同△20.2%),都道府県・市町村教育委員会14万件(同△14.9%),文化会館4万3千件(同△23.9%)の順
    • (2) 施設等別の学級・講座の受講者数
      • 受講者:総数で3,420万3千人と過去最高であり,種類別でみると,都道府県・市町村教育委員会(伸び率△10.9%),都道府県・市町村首長部局(同△11.8%),文化会館(同△22.1%)で減少,公民館,博物館,博物館類似施設で過去最高。
      • 各施設別受講者数:最も多いのは,公民館1,308万1千人(伸び率5.0%),次いで都道府県・市町村首長部局712万9千人(同△11.8%),都道府県・市町村教育委員会710万5千人(同△10.9%)の順
      • 学級・講座1件当たりの受講者数:博物館の90.1人が最も多く,次いで博物館類似施設64.9人,都道府県・市町村教育委員会50.7人,生涯学習センター50.3人の順
      • 女性受講者数:公民館が860万1千人で最も多く,次いで都道府県・市町村教育委員会460万8千人,都道府県・市町村首長部局419万7千人の順(前回比で増加したのは公民館の31万9千人増(同3.9%)で,次いで女性教育施設6万3千人増(同28.3%),青少年教育施設1万2千人増(同3.3%)の順)
    • (3) 学習内容別学級・講座数
      • 学習内容別:都道府県・市町村教育委員会では「教養の向上」が5万1千件(学級・講座総数に占める割合36.1%)で最も多く,次いで「家庭教育・家庭生活」4万4千件(同31.4%),「体育・レクリエーション」2万5千件(同17.7%)の順
      • 都道府県・市町村首長部局別:では「家庭教育・家庭生活」が7万3千件(同43.7%)で最も多く,次いで「市民意識・社会連帯意識」3万2千件(同19.4%),「教養の向上」3万2千件(同19.1%)の順
      • 公民館別:「教養の向上」が24万6千件(同52.3%)で最も多く,次いで「家庭教育・家庭生活」9万8千件(同20.9%),「体育・レクリエーション」7万8千件(同16.5%)の順
      • 青少年教育施設別:「教養の向上」が1万1千件(同63.6%)で最も多く,次いで「体育・レクリエーション」3千件(同16.4%),「その他」2千件(同9.5%)の順
      • 性教育施設別:「教養の向上」が4千件(同39.0%)で最も多く,次いで「家庭教育・家庭生活」3千件(同27.7%),「市民意識・社会連帯意識」2千件(同16.5%)の順
      • 生涯学習センター別:「教養の向上」が1万1千件(同55.1%)で最も多く,次いで「市民意識・社会連帯意識」3千件(同17.1%),「家庭教育・家庭生活」3千件(同13.3%)の順
  • 4 諸集会(講演会,文化・体育事業等)の状況
    • 実施件数:民間体育施設が61万2千件で最も多く,次いで公民館19万6千件,社会体育施設13万8千件の順(前回比で最も増加したのは,公民館が5万8千件増(伸び率41.9%)となっており,次いで都道府県・市町村首長部局2万6千件増(同39.1%),図書館1万1千件増(同15.4%))
    • 参加者数:文化会館が2,808万8千人で最も多く,次いで公民館2,233万9千人,民間体育施設1,615万1千人の順(前回比で最も増加したのは,社会体育施設が255万7千人増(同28.0%)となっており,次いで博物館類似施設131万2千人増(同65.7%),公民館73万8千人増(同3.4%))
  • 5 民間社会教育事業者との連携・協力状況
    • 民間社会教育事業者に委託した割合:学級・講座等の事業総数に占める割合は3.7%,各施設のうち最も高いのは社会体育施設の13.9%で,次いで文化会館の7.5%,生涯学習センターの6.6%の順
  • 6 社会教育関係施設における関係機関との事業の共催状況
    • 施設全体に占める共催事業を行った施設の割合:29.6%,各施設のうち最も割合が高いのは文化会館の52.1%で,次いで女性教育施設の49.7%,公民館の48.8%の順
  • 7 指導者研修の実施状況
    • 指導者研修の状況:有志指導者(民間団体等の指導者)を対象とするものが最も多く,実施件数は3千件で,参加者数は23万5千人(前回比で実施件数,参加者数ともに各対象で減少)
  • 8 施設利用者数
    • (1) 施設別利用者数
      • 利用者数(当該施設が主催又は共催した学級・講座及び諸集会の参加者数を除く。):社会体育施設が4億8,235万1千人で最も多く,次いで公民館2億3,661万7千人,図書館1億7,135万5千人(前回比で最も増加したのは社会体育施設の1,573万4千人増(伸び率3.4%)で,次いで女性教育施設782万5千人増(同274.6%),博物館611万6千人増(同5.2%)の順で,減少したのは民間体育施設926万7千人減(△5.9%))
      • 国民1人当たりの利用状況:社会体育施設を年3.8回,公民館を年1.9回,図書館を年1.3回,博物館類似施設及び民間体育施設を年1.2回利用
    • (2) 種類別博物館・博物館類似施設の入館者数
      • 博物館・博物館類似施設の入館者数:2億7,968万1千人(前回比で微増)
      • 種類別:歴史博物館7,719万9千人,美術博物館5,725万6千人,科学博物館3,508万5千人,動物園3,346万4千人,水族館2,968万2千人
      • 入館者数:博物館では,美術博物館が3,302万9千人(入館者総数に占める割合26.6%)で最も多く,次いで水族館2,044万1千人(同16.5%),歴史博物館1,977万人(同15.9%)の順(前回比で増加したのは科学博物館,歴史博物館,野外博物館,動物園,動植物園及び水族館で,それぞれ115万8千人増(伸び率9.1%),266万9千人増(同15.6%),20万7千人増(同7.7%),16万2千人増(同0.9%),108万3千人増(同25.2%),329万人増(同19.2%)となっており,その他の施設では減少)
      • 博物館類似施設:歴史博物館が5,742万9千人(入館者総数に占める割合36.9%)で最も多く,次いで美術博物館2,422万7千人(同15.6%),科学博物館2,126万9千人(同13.7%)の順(前回比で増加したのは総合博物館,科学博物館,美術博物館,野外博物館,動物園及び植物園で,それぞれ25万4千人増(伸び率3.1%),326万7千人増(同18.1%),74万3千人増(同3.2%),4万5千人増(同1.1%),38万9千人増(同2.6%),99万人増(同7.8%)となっており,その他の施設では減少)
    • (3) 種類別体育施設の利用者数
      • 種類別:社会体育施設では,体育館が2億1,114万人で最も多く,次いで多目的運動広場7,666万7千人,野球・ソフトボール場6,881万8千人の順(前回比ですべての施設で増加しており,陸上競技場からそれぞれ118万2千人増(伸び率4.1%),156万9千人増(同2.3%),132万2千人増(同1.8%),214万6千人増(同3.6%),37万8千人増(同2.3%),72万7千人増(同4.6%),841万人増(同4.1%))
      • 民間体育施設:水泳プール(屋内)が1億589万人で最も多く,次いで野球場・ソフトボール場1,931万9千人,体育館859万2千人の順(前回比で増加したのは野球場・ソフトボール場,多目的運動広場及び水泳プール(屋外)で,それぞれ222万5千人増(伸び率13.0%),44万人増(同13.5%),29万6千人(同10.0%)となっており,その他の施設では減少)
    • (3) 図書の貸出業務の実施状況
      • 登録者数,帯出者数及び貸出冊数:それぞれ3,403万人,1億7,136万人,6億3,187万冊(帯出者数,貸出冊数は過去最高)(前回比で,それぞれ204万人増(伸び率6.4%)74万人増(同0.4%),5,115万冊増(同8.8%))
      • 登録者1人当たりの年間利用回数:5.3回(前回比0.1回減),貸出冊数は18.6冊(同0.4冊増)
      • うち児童(小学生)の登録者数,帯出者数及び貸出冊数:それぞれ399万人,2,043万人,1億3,420万冊(前回比で,それぞれ29万人減(同△6.8%),321万人減(同△13.6%),104万冊減(同△0.8%),登録者1人当たりの年間利用回数は,6.7回(前回比0.4回増),貸出冊数は35.9冊(同2.9冊増))
  • 9 ボランティア活動の状況
    • 社会教育関係施設におけるボランティア登録者の総数:65万6千人(うち女性41万人)と過去最高
    • 種類別:公民館,博物館類似施設,女性教育施設,民間体育施設で前回調査と比べて減少となる一方,図書館,博物館,文化会館で過去最高
    • 各施設登録者数:公民館の25万人で最も多く,次いで図書館9万8千人,社会体育施設8万4千人(男女共に増加し,登録者数に占める男性の割合は37.6%で,前回比較で1.9ポイント上昇)
    • 登録制度のある施設数の占める割合を種類別:最も高いのは図書館で66.7%,次いで博物館37.0%,生涯学習センター35.9%,女性教育施設32.4%の順
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      • 《一言自省録》この日は鬼門日だったか,1年前も2年前もおさぼりだった。