034「なじみ集」実見

松山市立子規記念博物館で「特別展 明治を生きた若きトップランナー達 松山と子規・真之・漱石」が始まった(2009年11月28日〜2010年1月31日,特別展観覧券200円)。子規と漱石秋山真之との親交を中心にした展示で,明治20年前後から大正はじめまでの軸,短冊,額,和綴じ,洋箋など52点(うち10点は「坂の上の雲ミュージアム」所蔵品)があった。特別展だが,A4二つ折りのパンフレットが用意されていただけだった。

今回の目的は,松山市が3990万円で購入したという正岡子規選句稿「なじみ集」を実見することだった。入口付近の陳列棚に子規の俳句が記された部分を開く形でひっそりと置かれていた。これ以外に漱石の俳句が収められた箇所のコピーがあった。
「なじみ集」で新しく発見された俳句は,

  • しにゝ行くためにめしくふこじき哉(子規)
  • 馬士(まご)一人馬にひかるゝかれ野哉(子規)
  • かけものゝ達磨にらむや秋のくれ(子規)
  • 秋にやせて薄の原になく鶉(漱石
  • 鳥や来て障子に動く花の影漱石
  • 目出たさハ夢に遊んで九時に起き(漱石
  • 病後 糸柳ひねもすぶらりゝ哉(漱石
  • 暗き山明るき山や雲の峰(漱石
  • 姫百合や月を力に岩の角(漱石
  • 涼しさを大水車廻りけり(漱石
  • 月涼し馬士馬洗ふ河原哉(漱石

の11句で,展示は7句だった(A4横4ページの資料による)。
値段もさることながら子規自筆の選句集ということでさぞかし行列にでもなっているのではないかと思っていたが,いたって普通の雰囲気だった。むしろ休日なのにこんなものというほど鑑賞者は少なかった。来年1月までの開館なのでこれからに期待しておこう。
ついでに,道後公園内の湯築城資料館企画展(2009年11月3日〜12月13日,無料)に足を運ぶ。「『道後』の由来」と銘打った小さな企画展。キリスト教布教のために道後に来ていた司祭の報告をもとにフロイスが『日本史』に書いた道後の歴史も紹介していた。30ページの立派な図録が100円で売っていた。こちらは資料館の指定管理者になっている「コンソーシアムGENKI」が主催したものだ。
かたや3990万円の展示物に簡単なパンフレット,かたや入場無料に力を込めた図録。博物館や資料館の運営のあれこれを想像してしまった。

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      • 《一言自省録》この日も鬼門だった模様。