書誌情報:東京大学出版会,x+230頁,本体価格3,200円,2010年3月19日発行
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大卒就職は,学生本人だけでなく,採用する企業と送り出す大学にとっても重要な関心事である。最重要といえるかもしれない。
就職活動が早期化し,長期化し,さらには煩雑になったうえに,大学に入った時点から始まるキャリア教育やインターンシップの制度化などによって一面では学生をますます追い込む方向に作用しているといわざるをえない状況がある。編者のひとり本田は現下の就職活動からは「腐臭」が立ちのぼっていると書いていた(本田「「シューカツ」という理不尽」『UP』2010年8月号)。
大卒就職状況はなにが変わり変わっていないのか。個々の印象論や体験論を超えて,就職状況の実態調査からなにが見えてくるのか。本書は就職の客観的分析を企図し,労働市場,就職活動,採用基準の課題設定のもと90年代以降の大卒就職問題を扱っている。
とくに,大学就職部のセーフティネット機能,90年代初期には普通だったOB・OG訪問の盛衰,「自己分析」の分析を扱った各章は本書のような社会学研究書ならではの視点である。
本題の提言部分(1章)にある,大卒就職の時期や期間,職種別採用,大学教育における職業的意義の明確化は大学と企業・組織の双方が変わらなければ実現できない。多くの大学教職員(企業・組織の人事担当者は「8章 なぜ企業の採用基準は不明確になるのか」必読)と共有したい分析を含む論文集だ。
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