080国際学術研究集会:東アジアにおけるマルクス研究の到達点と課題


シンポジウム趣旨:歴史上最も流布したマルクスの著作は『共産党宣言』であり,日本では1904年の初訳以来約90種類の,中国では1920年の初訳以来30種類を超える翻訳があるが,内容理解は同一ではない。この間,両国では Nation (nation) の訳語について,大きな違いが生じている。日本語訳は「国民」が主流だが、中国語訳では「民族」であり,多くの日訳では,政権を奪取したプロレタリアートは,自らを「国民的階級に高める」という箇所が,中訳では自らを「民族的階級に高める」となっている。中訳の初訳は日訳と同一であった。では,いつ,なにを契機にこの種の違いが生じたのか?韓国ではどうか?ここでは,こうした問題を取り上げ、アジアにおけるマルクス理解の中の民族問題を考える。

シンポジウム趣旨:いよいよ新MEGA第I部門第5巻『ドイツ・イデオロギー』が刊行の運びとなる。そしてその刊行に合わせ,とくに「フォイエルバッハ」章に関しては改稿過程の正確な再現を果たすべく,電子版の編集作業が日本において進んでいる。こうした中で,長年『ドイツ・イデオロギー』テキストの編集問題に関わってきた日中韓の3名の研究者 が一堂に会し,編集問題研究の現段階や日中韓における翻訳普及史を解明することは意味深いものがある。今後,『ドイツ・イデオロギー』研究は,テキスト編集問題の解決の上に内実に迫ることが求められるであろう。そのためにも必要な現時点での最新情報を,本シンポジウムは与えてくれるものと期待される。