035橋本直樹著『『共産党宣言』普及史序説』

書誌情報:八朔社,404頁,本体価格6,500円,2016年6月25日発行

『共産党宣言』普及史序説

『共産党宣言』普及史序説

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(『経済』第256号,2017年1月号(→https://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/detail/name/経済2017年1月号NO.256/code/03509-01-7/),新日本出版社,90-91ページに掲載。)

かつて『聖書』とならんで全世界でベストセラーと言われたことがあり,『共産党宣言』(以下『宣言』)ほど人口に膾炙したマルクス本はない(ただし,『宣言』はマルクスエンゲルスとの共著)。「ヨーロッパに幽霊が出る――共産主義という幽霊である」・「これまでの社会のすべての歴史は階級闘争の歴史である」・「万国の労働者,団結せよ」(イギリス・ハイゲート墓地のマルクスの墓碑に ‘WORKERS OF ALL LANDS / UNITE’ と「フォイエルバッハに関するテーゼ」の「哲学者たちは…」の一節がともに英語で刻まれていることでもよく知られていよう)の章句は『宣言』の一節からである。
『宣言』初版は二月革命勃発直前の1848年2月に刊行された。ただ,刊本には23ページ本,30ページ本,ヒルシュフェルト版があり,部数や書誌情報については諸説あり不明確のままであった。著者は『宣言』初版を23ページ本と確定し「一見したところでは書誌的些事」(15頁)にこだわり,そこに『宣言』とその実質上の発行母体である共産主義者同盟が当時の社会主義運動に及ぼした影響を見ようとしている(「第1部 『共産党宣言』初版研究の新段階」)。また,『宣言』のいくつかの翻訳と改版の出版史および普及の歴史から影響史を分析している(「第2部 『共産党宣言』出版史・影響史の研究から」)。第1部と第2部で各7章(全14章)という大著でありながら控えめな「序説」としているのは(以下略,つづきは雑誌で)