583鎌田東二編著『モノ学の冒険』

書誌情報:創元社,303頁,本体価格2,600円,2009年12月1日発行

  • -

ここでの「モノ」は,「物」,「者」,「霊(もの)」を意味する。「モノ」の物的位相,者的位相,霊的位相にそれぞれ対応する。物と知覚・感覚,物と技術・技法・武術・芸術,シャーマニズム的現象や芸術家の創作体験・表現形態を対象とした「モノ学・感覚価値」研究である。
「新しい時代のコペルニクスよ」・「新しい時代のダーウィンよ」・「新しい時代のマルクスよ」と新たな天文学・生物学・社会組織を構想した宮沢賢治の発想と活動を「モノ学・感覚価値」研究の「先取り」と評価しつつ,「もののあはれ」に象徴的な日本のモノ的創造力と感覚価値を検証しようという。「モノ」と「感覚価値」の考察とは「「自然科学」の眼差しと「具体の科学(モノ学)」の眼差しとの融合」であり,たとえば博物館での展示はたんなる「物」の展示ではなく,展示者が美しいと感じる物から「モノ」の気配を作品化したものの展示になる。物の展示にとどまることなく「モノ」の体験が主眼となる。
「モノ」学とは研究内容や研究方法でいえば科学・宗教・芸術の各分野である。「もの食へば 物語りする モノノケを ものの見事に ものしたものぞ」(編者の「あとがき」から)。人間の精神活動と物質との応答関係には「多次元的なグレデーション」がある。「モノ」を対象に科学・宗教・芸術と学問横断的に「モノ学」の始まりを感知したが,フェティシズム(論)に取り憑かれた評者からすると拡散した印象をもった。