582福田史夫著『頭骨コレクション――骨が語る動物の暮らし――』

書誌情報:築地書館,205頁,本体価格1,800円,2010年6月30日発行

頭骨コレクション――骨が語る動物の暮らし

頭骨コレクション――骨が語る動物の暮らし

  • 作者:福田史夫
  • 発売日: 2010/06/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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哺乳類の骨格は大きくは頭,胴,手足からなる。首の頸椎は7個である。動物の種類によって骨格が違うのはそれぞれの動物の食や生活,行動に対応しているからであり,頭骨もそれぞれに違いはするものの脳頭蓋だけは変わらない。鼻口部分の顔面頭蓋部分は食物の種類や採り方,咀嚼・消化の仕方で変わる。
動物の子どもから大人への成長過程で頭骨は大きくなる。脳頭蓋のうち眼窩のあたりが大きく成長し,人間の場合なら顔面頭蓋は2倍も大きくなるという。著者が集めた頭骨約160個――すべて死んでいた動物で収集するために殺したのではない――から動物の生き様が見えてくるからおもしろい。強さを誇示するアクビ,頭頂部が盛り上がっているキングコング,交尾するための角などの話題と20ほどのコラム,写真とイラストは動物のなかのヒト(動物としての普遍性とヒトとしての独自性)を印象深く読み取った。
「動物たちは,どんな食物をどのようにしてとり,どのように咀嚼するかということで,顔の骨の形を変化させている」(148ページ)。期せずして頭骨から見える進化の歴史になっている。
末尾にある参考文献から「哺乳類頭蓋の画像データベース(第2版)」の所在を知った(獨協医科大学第一解剖学教室→http://macro.dokkyomed.ac.jp/mammal/jp/mammal.html)。2007年で更新が止まっているが,獨協医科大学解剖学(マクロ)教室,東北大学大学院歯学研究科,京都大学霊長類研究所日本モンキーセンター,現栖古生物研究所の標本をもとにした貴重なデータベースとみた。