1219ロベルト・ユンク著(山口祐弘訳)『原子力帝国』

書誌情報:日本経済評論社,271頁,本体価格2,500円,2015年7月15日

原子力帝国

原子力帝国

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初訳は1979年(原著は1977年)であり,再刊になる。ひとたび社会が核技術の導入を認めれば核技術を監視するものから逆に市民的自由や民主主義を抑圧するものに変質し専制国家になる。
スリーマイル島事故,チェルノブイリ事故や2011.3.11を経験していない段階で社会の未来を「帝国」と見なした着眼は著者のファシズム経験と無縁ではない。放射線制御を完全にしえない点では原爆=軍事,原子力=平和の構図は正しくなく,生命と環境に負荷をかけ脅威を与え続けることでは区別はない。
共謀罪」の深層心理として原発や核物質を狙ったテロへの「予防」と「監視」の必要性があると考えると,本書の分析は的を外していない。40年前に「非人間性への進歩」(原著の副題)と喝破した「帝国」の姿は変わっていない。