796後藤康夫・森岡孝二・八木紀一郎編『いま福島で考える――震災・原発問題と社会科学の責任――』

書誌情報:桜井書店,286頁,本体価格2,400円,2012年10月15日発行

いま福島で考える―震災・原発問題と社会科学の責任

いま福島で考える―震災・原発問題と社会科学の責任

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「世界で最も有名な福島」(入戸野修福島大学長の挨拶)で昨年開催した原発・震災問題のシンポジウム(2012年3月24日,25日)の記録集である。「福島の置かれた現状,とくに震災・津波原発事故・風評被害といった複合災害によって引き起こされた教育・文化・経済・産業などの全般にわたる被害状況」(同)を福島で感じつつ,ポリティカル・エコノミーの意味を再考する機会になった。とはいうものの評者は中国出張と重なり出席できなかった。
このシンポは経済理論学会,経済地理学会,日本地域経済学会,基礎経済科学研究所が主催し,政治経済学・経済史学会の協賛,福島大学うつくしまふくしま未来支援センターと日本経済学会連合の後援による。経済学の諸分野(経済学史学会を除く)の研究者と市民参加,学際的な議論,社会システムとエネルギーの問題,被災の現状と復興の課題,学術と社会とのかかわり(社会科学の責任)を論じることにおいて,本書の特徴が出ている(桜井書店の新刊紹介参照→http://www.sakurai-shoten.com/content/books/081/bookdetail.shtml)。
昨年愛媛大学で開催した経済理論学会第60回大会の共通論題「大震災・原発問題と政治経済学の課題」はこのシンポと連動した企画であった。本書の刊行は大会当日までに間に合ったのだった。
原発災害の現地から」(シンポの第一部)の報告から抽出されたキーワード(「現場」,「責任」,「多様性」,「構想力」:後藤のまとめから)は市民参加型シンポでなければ出てこなかった。政権交代とともに復興と脱原発とが「ホコ・タテ」で論じられる傾向が強くなっている。「1.17」の今日,「3.11」をあらためて考えてみたい。