680服部正治・竹本洋編『回想 小林昇』

書誌情報:日本経済評論社,viii+383頁,本体価格2,800円,2011年12月12日発行

回想 小林昇

回想 小林昇

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2010年6月3日に亡くなられた小林昇の回想記である。小林昇経済学史の評価検討と文学・短歌・こけし・評論など小林の生活人としての姿への照射を含んでいる。イギリス重商主義・スミス・リストおよびステュアート論という小林の研究の柱に沿った論点摘出(「経済学形成の国民的・歴史的個性の解明を比較史的に行う」:編者・服部)と各分野からの回想からなっている。最初から通読しても,興味に応じて飛ばし読みしても味のある文章に出会うことができる(内容一覧→http://www.nikkeihyo.co.jp/books/view/2186)。
諸田の『ライン新聞』誌上におけるリストとマルクスとの関連,米田と岩本によるフランス経済学史と「固有の重商主義」論はあらためて評者の関心を惹起させてくれた。水田の回想――「彼は(小林は:引用者注)古版本を読むことによる書誌的な視野の拡大を薦めながら,そこから選びとった研究領域そのものの拡大についてはきわめて禁欲的であった」――は一言にして小林を語っていた。
評者は小林の歌集を繙いたことがない。回想記のなかで何人かが短歌と小林の研究者・生活人の息吹とに触れていた。とくに編者・竹本の「批判的治世の覚悟と疲労」,小林の長女・松本旬子「父と母の思い出」はいくつかの短歌を織り交ぜ小林を回想していて秀逸だった。
小林の蔵書は教鞭をとった立教大学に「小林昇文庫」として保存され,主要部分を来年公開するそうだ。遺品整理で見つかった短文を追加して「小林昇著作・短文目録」などが資料として掲載されている。本ブログで掲載した「小林昇著作目録」(「記事一覧」→http://d.hatena.ne.jp/akamac/archive?word=%2A%5Bkobayashi%5Dl)に追加修正をするつもりでいる。
【2012年2月5日追記:編者の一人・服部による「編集を終えて――『回想 小林昇』――」(日本経済評論社『評論』第186号,2012年1月)がある。】