935後藤宣代・広原盛明・森岡孝二・池田清・中谷武雄・藤岡惇著『カタストロフィーの経済思想――震災・原発・フクシマ――』

書誌情報:昭和堂,xii+367頁,本体価格2,800円,2014年3月11日発行

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「勤労者とともに勤労者のための経済学の創造」・「働きつつ学ぶ権利を担う経済科学の総合」を掲げてきた基礎経済科学研究所に集うメンバーの論文集である。3.11をカタストロフィーとしてとらえるのは,遅々として進まぬ復興と原発事故の甚大な影響を直視するところから出発している。原発を巡る問題状況を中心としながら,災害史,復興策,カタストロフィーを招いた背景を論じている。
カタストロフィーという大きな括りのもとで,収束する結論をあえてまとめず執筆者の問題意識を存分に展開させている。人類史の新たな段階を展望する後藤稿,地域と人間の復興理論を提唱する広原稿,原発暴走と過労死問題のシステムの共通性を告発する森岡稿,憲法復興学を構想する池田稿,経済学研究における専門知と総合知の問題に置換させた中谷稿,軍事攻撃対象としての原発と21世紀の戦争のあり方を憂慮する藤岡稿とそれぞれに力作が並ぶ。
復興という名で進むゼネコン奉仕や世論向けに脱原発の可能性を見せつつもひたすら原発再稼働を急ぐ政治を見るにつけ,3.11のちょうど3年後に刊行となった本書の問いかけは大きな意味をもっている。