書誌情報:千葉大学経済研究叢書(8),7+585頁,非売品,2012年3月30日発行,ISSN:1343-036X
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「大学の教員生活を終えるにあたり漸くにして公刊できた最初の単著」(あとがき,579ページ)は大著である。ボリュームだけではない。「エボリューションとレギュラシオン」を軸に現代資本主義の多様性と構造変容の理解に繋ごうという強い意志が行間から溢れ出ている。30ページに及ぶ参考文献を見るだけでも圧倒される。
制度を論じる時イノベーション論が遠のき,イノベーション・システム論を論じる時制度理論が不鮮明になるジレンマを解こうというのだ。いわゆるレギュラシオン理論に与しない評者も著者の知的格闘には励まされる。
科学・技術革新をどう捉えるかは現代資本主義論の大きなテーマである。著者は経済学理論史の知見を生かし,イノベーション論と制度論を相互に結びつけることによってこのテーマに迫ろうとしている。眼前にある資本主義を見据え,レギュラシオン理論にもとづく現代資本主義論というべき書物であり,イノベーション論・制度論の理論史的解剖といえるのではないかと思う。
イノベーションの経済成長路線からレギュラシオン理論による「人間形成型成長レジーム」によるイノベーション活用という著者の未来視線――たとえば「公共的な活動・成果を排他的専有から守るといった「科学・技術の公共政策」をめぐるこうした対抗と連携から,われわれはもっと学んでよいのである」(502ページ)――は読み取ることができた。
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