825大島堅一著『原発はやっぱり割に合わない――国民から見た本当のコスト――』

書誌情報:東洋経済新報社,ix+217頁,本体価格1,600円,2013年1月3日発行

  • -

評者も原発は割に合わないと思う。前著『原発のコスト』ですでに原発の「安価神話」と「安全神話」をとことん批判し,省エネと再生可能エネルギー導入の代替案を提起していたから,本書に目新しさはない。著者の一般市民向け講演を再構成しており,わかりやすさと読みやすさからいえば前著を上回る。
福島原発事故は「世界最大規模の原発事故」である。チェルノブイリスリーマイル島も暴走事故とメルトダウン事故との違いはあれ,それぞれ1基の事故であった。福島原発事故は3基の原子炉で事故が起こったのだ。しかも,「天災の部分と人災の部分が複合的に重なった多重災害」(27ページ)・「二重,三重の人災」(29ページ)である。これを生み出した原発大国の背景と原子力政策,原子力安価論や原発のコスト,使用済み燃料処分,再生可能エネルギーの可能性と批判に終始していない。
前著でも言及していた「原子力複合体」への舌鋒は厳しい。「テレビ,新聞,雑誌などのメディアも,カネの力で懐柔され,原子力複合体に取り込まれ,数々の原子力神話の普及に尽力してきました。大学の学者も,原子力神話に学術的権威を与える役割を果たしてきました。多くは旧帝大東京工業大学の教員ですが,とりわけ東京大学が果たしてきた役割は大きいでしょう」(58ページ)。初等中等教育の教科書でも「安価神話」・「安全神話」を刷り込むうえで無視できない。最近ようやくその検証が始まったとも聞く。
電力会社は国策に則って原発政策を遂行してきた,というのは言い訳だという。「実際には,電力会社や電事連は,国のエネルギー政策,原子力政策の形成に直接かかわったき」たからだ(199ページ)。電力会社が安全性を無視して推進してきたがゆえに原発依存を生んだ。経営の失敗は自らかぶらなければならない。市場経済の大原則ではないか。
原発のコストは脱原発のコストを上回る。「脱原発は,イデオロギーで行うのではなく,国民経済のために実施すべきもの」(201ページ)という著者の主張は脱原発論=イデオロギーを超える正論だ。