1218山本義隆著『原子・原子核・原子力――わたしが講義で伝えたかったこと――』

書誌情報:岩波書店,viii+241頁,本体価格2,200円,2015年3月24日

原子・原子核・原子力――わたしが講義で伝えたかったこと

原子・原子核・原子力――わたしが講義で伝えたかったこと

  • 作者:山本 義隆
  • 発売日: 2015/03/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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原発事故でわかったことは,専門家に任せておけばうまくいくとはかぎらないということだ。専門外だからと専門家に任せてはいけない。民主主義とは自分の頭で考えて判断することを必要としており,そのためにこそ学ぶのだ。
原子,原子核原子力の理解を科学史上に位置づけた物理学入門書は「専門外」の評者にはわかったつもりで読んだ。原発が安いわけでもなく安全でもないことはすでにはっきりしている。「電力の需要があるから原発を造ったのではありません。メーカーやゼネコンや中央官庁や政権党や地方議会の有力政治家や御用学者からなる利権構造が原発を推進してきた」(222ページ)。と同時にこの利権構造だけではなく,「将来的な核武装の選択肢を確保しておくために核資源を備蓄し核技術を保有しておきたいという,一部の国家主義的な政治家のきわめて危険な思惑もある」(223ページ)。
原発再稼働をやめ脱原発に舵をきることは将来にわたって核武装をしないと宣言することと同じである。唯一の被爆国である日本の選択ははっきりしている。