946山本義隆著『福島の原発事故をめぐって――いくつか学び考えたこと――』

書誌情報:みずす書房,101頁,本体価格1,000円,2011年8月25日発行

福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと

福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと

  • 作者:山本 義隆
  • 発売日: 2011/08/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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2011.3.11の半年後に刊行されただけに,原発事故の意味を原発建設から科学技術の到達点に位置づけた視点の確かさが光っている。
原発開発は「政・官・財がむらがる利権集団」(5ページ)によって原子力の「平和利用」が進められた。その「平和利用」が「潜在的核兵器保有国」(18ページ)と一体であった。原子力発電を推進するということは「潜在的核兵器保有国」を放棄しない,維持し続けることを意味している。
「無害化不可能な有毒物質」(33ページ)を生み出し続ける原発それ自身技術的には未熟である。高レベル放射性廃棄物地層処分には「数万年以上というこれまでに経験のない超長期の安全性の確保」(榎本聰明(東電副社長・原子力本部長)『原子力発電がよくわかる本』から。本書36ページから孫引き)と言うにいたっては「正気で書いているのかどうか疑わしい」(37ページ)。数十年や数百年ではない。数万年以上かかる処理に誰が責任をもつのだろうか。原発は作るべきではないのだ。「子孫にたいする犯罪」(93ページ)だからである。
いま,脱原発・反原発を主張するならば,それは同時に脱原爆・反原爆を意味する。原子力の「平和利用」が「原発ファシズム」(87ページ)のもとで進められ,福島の惨状を招いた。政権党が向き合うべきは原発の再稼働ではない。