1031早川タダノリ著『原発ユートピア日本』

書誌情報:合同出版,190頁,本体価格1,800円,2014年1月25日発行

原発ユートピア日本

原発ユートピア日本

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科学啓蒙を装った戦後最初の原発プロパガンダ記事は連載記事「ついに太陽をとらえた」の「その一 我輩はウラニウム」と題した読売新聞1954年1月1日付記事だった。この連載記事はのちに読売新聞社中村誠太郎(東大助教授,理学博士)校閲の同名の単行本になった。「おもしろく読めて,しかも信頼のおける原子力常識書」と銘打って。
政府・電力会社は,これまで,原発で電力料金は2000分の1に(1950年代),原子力が脱石油の本命(1970年代),日本の原発は安全です(1980年代),原子力地球温暖化防止に役立つクリーンエネルギー(1990年代),日本のエネルギーの主食は原子力発電(2000年代),原発はコントロールされている(某首相),安全が確保されると判断されれば原発再稼働(現在)と経済性,脱化石原料,安全,地球温暖化防止を謳ってきた。ビキニ被曝,チェルノブイリ原発事故,原発のトラブル隠し・データ隠しなどがあっても原発推進に邁進するためのプロパガンダの実態はどうだったのか。ディストピアを自認する著者が集めた資料の一部を眺めればなるほどとうなずくばかりだ。
読売だけでない新聞・雑誌への広告,テレビを通じた広報,PR館,各種イベント,エコーはがき,切手,小中学校における原子力教育の副読本,メディア監視事業などなど山のようにある原発推進プロパガンダのごく一部がここにある。「原発PRは,事故や不祥事が起こった時にはおとなしく,人びとが惨事を忘れると大胆に展開される」(190ページ)。
原発推進に一役かった学者・文化人・タレントたちも忘れないでおきたい。