428二分野良明著『大呉服店から百貨店の誕生――江戸から昭和初期百貨店絵巻――』

書誌情報:オフィス・コシイシ,321頁,電子ブックダウンロード版(1,500円)・電子ブックCD-R版(1,700円+送料200)・オンデマンド印刷版(8,820円+送料400円),2009年11月11日発行,[isbn:9784901453332]【2010年1月9日現在未登録】

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日本の百貨店(デパート)のひとつの起原は,江戸時代の呉服店である。三越も大丸も松坂屋高島屋伊勢丹もみなそうだ。
著者は高校卒業後2009年9月に定年退職するまでずっと大丸京都店に勤めた。この間,江戸の浮世絵・絵本・古書,明治の各百貨店発行の社史,浮世絵,双六,絵はがき,ラベルなどを収集し,これらを中心に江戸時代から1930年代頃までの百貨店の文化史をまとめた。ちなみに1993年大丸京都店西館完成時に著者のコレクションの展示をしたことがあるという。
江戸時代から時代を追って呉服店から百貨店への変化を追った部分と大阪・京都のそれをまとめた部分から成っており,呉服商の歴史,現金掛け値なしの現金商売,新興呉服店の台頭,呉服店の近代化(百貨店化),建物の変遷,宣伝・広告など百貨店にかんする話題が散りばめられている。
長年のコレクションをオールカラーで紹介し,それらを整理しひとつの物語にした著者の努力は並大抵ではなかったはずだ。電子出版ということも追い風になったにちがいない。各ページにひとつはある資料をながめるだけでも一見の価値がある。
評者はもっとも廉価なダウンロード版(pdf)を利用した。
資料は集めていたという日本各地の百貨店の状況や戦前から現代までの展開は次作に期待していいと思う。