649村岡伸久著『偽札百科』

書誌情報:国書刊行会,193+X頁,本体価格1,800円,2010年9月20日発行

偽札百科

偽札百科

  • 作者:村岡 伸久
  • 発売日: 2010/09/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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お隣の中国では6億元以上,日本円換算で72億円(1元12円で計算)以上もの偽札が押収された(2009年)。さらにホログラムも再現した偽日本円も出回っているという(以上本書から)。ソフト開発者にして紙幣・硬貨関連機器ウォッチャーによる被害者にならないための読本が売りである。
紙幣識別機の構造や偽造防止技術の問題点など偽札作りハウツー本ともみえなくもないが,紙幣,クレジットカード,証書,金券,パスポート,免許証,高速道路の回数券,コンサートのチケットなど偽造のマニア向け専門雑誌などではアンダーグラウンド情報はいくらでもあるそうだから,本物と偽物とをめぐる攻防から偽造防止技術の脆弱性がよくわかる。
国内外に関係なく印刷技術は一般技術であり,日本の例外ではない。自動販売機,券売機,両替機など紙幣を扱う機械の設置数が多い日本の場合,流通している日本銀行券は桁違いに綺麗である。紙幣劣化は紙幣識別機での判別をしにくくしてしまうからで,日本銀行はそのためにせっせせっせと古い紙幣を回収し新札を流通させている。「日銀は,紙幣識別機メーカがストライクゾーンを狭めてもいいように,汚れた紙幣を市中から排除」し,「紙幣識別機メーカのために税金をはたいて紙幣を毎日入れ替えている」(190ページ)。
7種の偽造防止技術を使ったビール券のほか,クレジットカードの会社ロゴやCD・DVDの著作権保護にはホログラム印刷が施されている。
複写機やイメージスキャナではパールインキを再現できないこと,額面が印刷されている深凹版印刷箇所は指で触ってもインクの盛り上がりを感じられないこと。当面このふたつを知っていれば偽札に騙されないとのこと。
紙幣識別機メーカの関係者はすでにチェック済みの本かもしれない。