656不当提訴と不当解雇

日本科学者会議編『日本の科学者』2013年5月号(本の泉社,[isbn:9784780708257])を読む。福田邦夫「SLAPP言論弾圧――学問の自由と野中教授不当提訴事件――」で触れている「野中教授不当提訴事件」は,明治大学の中郁江教授がある雑誌で指摘した APF (アジア・パートナーシップ・ファンド)の「念書」と不当労働行為救済申立への鑑定書について,賠償と名誉棄損で提訴された問題である。
SLAPP とは Strategic Lawsuits Against Public Participation の略で,通称「恫喝訴訟」とも呼ばれている。「公に意見を表明したり,請願,陳情や提訴を起こしたり,政府・自治体の対応を求めて動いたりした人々を黙らせ,威圧し,苦痛を与えることを目的として起こされる報復的な民事訴訟のこと」(孫引き)である。福田によれば,近年公的権力によるものだけでなく企業による「恫喝訴訟」が日常的におこなわれているという。新銀行東京事件,オリコン事件,七つ森書館事件,ユニクロ対文春問題をその例に挙げている。SLAPP への反 SLAPP 法(SLAPP 被害防止法)の制定の必要性を論じていた。
谷口富士夫「名古屋女子大学での不当解雇問題」は,「解雇」された当事者の報告である。「授業改善の面接指導」から始まり教授から助手への降格,さらにはブログを理由にした解雇,名誉棄損による賠償請求とエスカレートしている。これも SLAPP と呼ぶことができるだろう。
「物言えば唇寒しユニバーシティー」。