941椎橋章夫著『ペンギンが空を飛んだ日――IC乗車券・Suicaが変えたライフスタイル――』

書誌情報:交通新聞社新書(058),230頁,本体価格800円,2013年8月16日発行

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JR東日本のIC乗車券カード「Suica」が誕生したのは2001年11月18日だった。そしてIC乗車券の全国相互利用ネットワークが始まったのは2013年3月23日だった。Suicaは乗車券のIC化を実現するとともに電子マネー,個別認証,ポインタサービス,携帯電話との一体化など名実ともに社会インフラの一部となった。切符→磁気式切符→オレンジカードイオカードSuicaという一鉄道事業の乗車券サービスが鉄道の枠を超えわれわれのライフスタイルに大きな変化をもたらしたことになる。
プロジェクトX――執念のICカード 16年目の逆転劇――」(2005年11月1日)で描かれた新しい技術の開発とヒューマンインターフェースとの試行錯誤があればこそのペンギン飛行につながっている。
ICカード読み取り機の機面角度が13度であること,磁気式自動改札システムは近鉄と阪急が最初に導入したこと,世界最大のIC乗車券ネットワークにいたる相互利用の積み重ね,Suicaの自律分散システム特性など「シームレスな世界最大規模の交通ネットワークシステム」完成にいたる道は平坦ではなかった。
Suicaプロジェクトのキーパーソンだった著者は社会人大学院生となり学位を取得する。Suicaは人々に生活革命を,著者にキャリア変革をも起こしていた。