106東京富士美術館所蔵写真展「ロバート・キャパと過ごす時間/光の風景へ」および図録

いきなりトロツキーの写真が飛び込んできた。デンマークの学生を前にロシア革命史について講演するトロツキーである。キャパがコペンハーゲンで1932年11月27日に撮影したもので写真家としてのデビュー作という。つづけてコンタクト・シート(フィルムを現像し,適当な個所で切りそろえて一枚にプリントしたもの)もあった。
人民戦線時代の共和国や第二次世界大戦中の連合国の兵士たちの姿はキャパの写真を通して何葉か見ている。ヘミングウェイイングリッド・バーグマンヒッチコックジョン・スタインベックピカソアンリ・マティス,ジョン・ヒーストン,蔣介石,JFK(ただし椅子に座った頭部のみ)ら有名人の写真も撮っていた。
あの「崩れ落ちる兵士」はキャパの作品として展示されていた。この写真が掲載され,キャパの名が一躍知られることになった『ライフ』誌(1937年7月12日)の現物も資料として展示されていた。ゲルダ・タローが撮った同時期の共和国軍兵士の写真も複数あった。
「溝を跳び越える共和国軍兵士」の解説には「この一連のシーンを撮影した複数のネガが,「崩れ落ちる兵士」のネガを除いて切り離されて現存しており,この時の兵士たちの動きや背景の風景などを手がかりにして「崩れ落ちる兵士」が撮影された状況について議論が行われている」とある。沢木(関連エントリー参照)や吉岡栄二郎著『ロバート・キャパ――『崩れ落ちる兵士』の真実を追う――』([isbn:9784787273567])を指してのことだろう。
来日後(1954年),ラオスを経て直行したベトナムで地雷を踏んで40歳の短い一生を終えたキャパを追憶することができた。カタログはこの展示専用で1,800円。もちろん買い求めた。