書誌情報:岩波新書(1537),iv+212頁,本体価格780円,2015年3月20日発行
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アホウドリを追った日本人――一攫千金の夢と南洋進出 (岩波新書)
- 作者:平岡 昭利
- 発売日: 2015/03/21
- メディア: 新書
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鳥島がかつてはアホウドリの生息地だったことは知っていた。1933年に捕獲が禁止され,1958年には天然記念物や国際保護鳥に指定されたことも,乱獲があったからというレベルでしかなかった。
アホウドリの捕獲はバードラッシュ,鳥類の輸出大国(羽毛と剥製),密漁による撲殺,出稼ぎ労働者の棄民など凄まじい実態だったことを本書で知ることになった。アホウドリの捕獲目的で鳥島,南鳥島(鳥島の南ではないのに南なのは鳥島=アホウドリと関係する),あの尖閣諸島,硫黄島,マリアナ諸島,北西ハワイ諸島へ進出し,アホウドリを取りまくるとグアノ(鳥糞)・リン鉱へ転換し遠く南シナ海のプラタス島(東沙島),あのスプラトリー諸島(南沙諸島)にまでいたる。山師的商人から資本力のある企業へと主体を変えながらもバード・ラッシュを支えたのが遠洋漁業奨励法(1898年施行)だった。遠洋フカ漁業名目で国の奨励金を受けた,その実鳥類捕獲とは官民一体の資源略奪にほかならない。
世界最大の海洋自然保護地域である北西ハワイ諸島「パパハナウモクアケア」が世界遺産(2010年)になったのは日本人による鳥類密猟から島を守ったことが原点であった。また,カツオ漁業,はく製業,鳥糞採取とのちに多角化するが,尖閣諸島への日本人進出がアホウドリの羽毛と夜行貝(螺鈿細工の原料)の採取のためだった。
日本の排他的経済水域と領海が世界第6位なのは,年間何百万羽というアホウドリの撲殺によって基礎づけられた。本書のテーマの謎解きには40年かかったという。生糸が輸出の太宗だった表舞台の裏では鳥類輸出大国として南進する近代日本の別の姿が見えてくる。
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