034角田修一著『社会哲学と経済学批判――知のクロスオーバー――』

書誌情報:文理閣,iv+440+21頁,本体価格3,800円,2015年12月10日発行

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(『経済』第249号,2016年6月号(→http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/detail/name/経済2016年6月号NO.249/code/03509-06-6/),新日本出版社,116-117ページに掲載。)

社会哲学とはマルクスの社会経済学(=政治経済学)の基礎となっている史的唯物論を意味し,ヘーゲルのそれと弁証法を批判的に継承し乗り越えたものである。知のクロスオーバーとは著者が本書で挑戦している初期マルクスの哲学と思想,現代社会=政治哲学におけるリベラリズムコミュニタリアニズム,意識とイデオロギーの理論,社会科学と経済学の方法,現代経済学批判,民主主義と資本主義などを指す。基礎となっているのはヘーゲルからマルクスへの社会哲学の批判的継承関係であり,マルクス経済学の基礎理論を深く究明することによって現代経済学としての可能性を確定しようという意図が込められている。
著者の前著『「資本」の方法とヘーゲル論理学』(大月書店,2005年)に対して「ヘーゲルぶり」で「神秘的主張」なる評があったという(本書第九章参照)。たしかに認識における唯物論的方法である分析的方法によって経験科学としての古典派経済学を徹底批判できた意味ではマルクス自身ヘーゲル学徒であった。それだけでなく,マルクスが「生産関係の物象化」「資本制生産の諸矛盾」「人間発達」として未完成ながらも資本概念の基本性格を理解し,実在の対象と認識の対象との区別,理論的理念と実践精神的理念との区別まで到達しえたマルクスを再発見し,上のクロスオーバーを試みている意味では「マルクスぶり」と評するのがふさわしい。
著者がほぼ二十年にわたって考究した論稿を纏めて集成した本書は,第一篇「社会哲学――自己意識の哲学から社会的意(以下略,つづきは雑誌で)