1716大場秀章著『牧野富太郎の植物愛』

書誌情報:朝日新書(904),198頁,本体価格810円,2023年4月30日発行

牧野富太郎が植物の多様性を科学的に研究する植物分類学に一生をかけた。植物学に開眼し研究対象にするにいたった文献や先人・友人たちの交流から東京大学に職を得て学界で評価され,植物学の啓蒙に励む牧野を描いている。
標本作製や植物画,印刷術などの解説は牧野と同じ植物分類学者であり,同門だった著者ならではのものだ。牧野の自叙伝での叙述についていくつかの疑問点を挟みながらも植物愛好者の輪が今日に続く貢献を牧野に帰していた。牧野が47歳の時に発足した「横浜植物会」,その3年後にできた「東京植物同好会」は現在もその活動が継続されているそうだ。
何度か足を運んだことがある高知県立牧野植物園や練馬区立牧野記念庭園だけでなく,東京都立大学に牧野植物標本館があること,牧野を支援した池長孟(はじめ)が神戸に池長植物研究所を開設したことを知った。
神戸には牧野縁の六甲高山植物園や上記研究所跡には会下山(えげやま)小公園がある。