1720青山誠著『牧野富太郎——〜雑草という草はない〜日本植物学の父——』

書誌情報:角川文庫(あ113-2),219頁,本体価格760円,2023年2月25日発行

牧野の勉強心得「吝財者は植学者たるを得ず」(「赭鞭一撻」)の地で行った牧野の一生をいくつかのエピソードを交え一書にしている。
よく知られている牧野の植物採集や命名だが,台湾名物「愛玉子(オーギョーチー)」の原料「カンテンイク」は台湾での植物調査の産物であったことや台湾固有種「タイワンマダケ」の発見も牧野による。
牧野を一時期物心両面で支援した神戸の池永孟の「学者ほど泥棒をするものはなし」との日記を紹介し,牧野への毀誉褒貶相半ばする人物評も書き込んである。
「草を褥に 木の根を枕 花と恋して九十年」の牧野の人生を知ることができる(本書では「花を」,「五十年」となっている。高知県立牧野植物園の温室を出た所に歌碑がある)。
ちなみに,牧野富太郎が養子に入った酒蔵は,番頭だった井上和之助が従姉妹猶と結婚し後を継ぎ,さらに明治末期に竹村家に買収された。最終的には土佐の銘酒として知られ,2018年11月に創業100年を迎えた,「司牡丹」の司牡丹酒造(→https://www.tsukasabotan.co.jp/index.html)が譲り受けた。そんな縁もあって,司牡丹酒造は,牧野が詠んだ詩から名づけた「花と恋して」(純米酒および純米吟醸酒)を商品化している。ラベルには牧野の似顔絵が描かれている。