1792水島吉隆著・太平洋戦争研究会編『写真で読む昭和史 占領下の日本』

書誌情報:日経プレミアムシリーズ(102),221頁,税込価格957円,2010年12月8日発行

連合国軍の日本進駐から国際社会へ復帰するまでを対象に,占領下日本の状況を写真(多くが米国国防省所蔵)で伝えている。
敗戦国日本がまず最初にしたことはなにか。大日本帝国軍隊が中国大陸やアジア各地でおこなったことを進駐軍にやられる。婦女子の暴行である。東久邇宮内閣は成立した翌日に進駐軍向けの慰安所(特殊慰安所)設置の内務省司令を出し,「日本の両家の婦女子の貞操」(26ページ)を護るべくRAA(Recreation and Amusemento Association)を作ったのだ。池田勇人宮澤喜一も官僚としてRAA設立を知っていたはずだ。3ページしか費やしていない日本政府が慰安所を作ったという冒頭部分だけでも本書の意味がある。もっとも1946年3月には進駐軍の間に性病が蔓延し,マッカーサーが閉鎖命令を出すことになる。パンパンやオンリーは占領下の日本で生まれたのだ。
本書によって,上からの民主化,飢餓と混沌,逆コースと再軍備,国際社会への復帰と戦後直後の日本を通覧できる。