013歌田明弘著『「ネットの未来」探検ガイド――時間と言葉の壁を超える――』

書誌情報:岩波アクティブ新書99,ix+187頁,本体価格760円,2004年1月7日

初出:コンピュータ利用教育協議会『コンピュータ&エデュケーション』第16号,東京電機大学出版局,2004年6月1日

  • -

著者の歌田さんには本誌第第10号(2001年5月)に,巻頭インタビュー「デジタルの時代と新しい記憶装置」に登場いただいた。また,評者は,すでに本コーナーおいて二度にわたって近著を紹介したことがある。第10号で『本の未来はどうなるか』(中公新書,2001年11月)【akamac book review, 2007.02.27】,第11号(2001年11月)で『インターネットは未来を変えるか?――科学技術を読み解く――』・『インターネットは未来を変えるか?――現代社会を読み解く――』(アスキー出版局,2001年7月)【akamac book review, 2007.03.04】がそれだ。
この本は,普通のインターネット利用者の立場から書かれたインターネット技術の案内書である。検索技術(第1章,第2章),ウェブ情報の自動処理(第3章),保存技術(第4章),機械翻訳(第5章)そしてファイル共有技術(第6章)をそれぞれみずから体験することで,インターネット技術の可能性に言及している。各章が「役に立つ」だけでなく,「驚くこと」に焦点を合わせているだけに,まずは手軽に読むことができる。と同時に,インターネットの将来像をデータベース型知識にもとめつつ,インターネットと人間社会とのかかわり(「社会との葛藤」と著者は表現した)にまで深め論じている。
「先端的な技術について知識を持てる人はかぎられている。しかし,その影響は,あまねく人におよぶ」(「エピローグ」)。インターネットの世界でおこっている地殻変動は,まちがいなく人の世界での「知」殻変動につながる。