031エレーヌ・カレール=ダンコース著(石崎晴巳・東松秀雄訳)『レーニンとは何だったか』

書誌情報:藤原書店,686頁,本体価格5,700円,2006年6月30日

レーニンとは何だったか

レーニンとは何だったか

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著者は,『崩壊した帝国』においてソ連崩壊を10年前に予言した。当時はまだソ連研究に制限があったが,今回はその後に公表された多くの秘密資料の分析が生かされているという。
善良な革命家レーニンと歴史の必然を持って地球上にあらわれたロシア革命という神話に挑戦すると同時に,スターリンの罪悪の源泉をレーニンに帰着させる。レーニンの1870年代の修行時代から職業的革命家および革命前の時期を経て革命後の国家形成まで追跡することによって,民衆蜂起の成果を簒奪しまた時に応じてデマゴギーを使いわけたしたたかな人間レーニンが描かれる。レーニンが権力掌握に成功したのは,レーニンの卓越性にあったのではなく,敵対する陣営の弱さとレーニンへの過小評価にあったとされる。
かくしてスターリン的ロシアの現実はスターリンその人に求められるのではなくレーニンに源を発し,レーニン的ロシアの歴史がそのままスターリンに継承されることになる。スターリンスターリンたらしめた要因は確実に相対化される。終始一貫してのレーニンに対する視線の冷ややかさが,700ページ近くの大著を熱くさせている。
同じ著者によって続編『未完のロシア』『ユーラシア帝国』も翻訳・出版されるという。