書誌情報:白水社,633+90頁,本体価格5,200円,2010年3月10日発行
- 作者:サイモン・セバーグ モンテフィオーリ
- 発売日: 2010/02/01
- メディア: 単行本
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ギャングのゴッドファーザー,大胆不敵な銀行強盗,殺し屋,海賊,放火犯。21世紀まで秘められたスターリンの実像である。「極悪非道な人間」(190ページ),「軍事とテロルの卓越した組織者」(232ページ),「非情な地下陰謀家」(272ページ),「自己中心癖,粗暴さ(そして恐らく女たらし)」(509ページ),「弾圧のマシーン,陰謀には終わりがないという冷酷な妄想心理,すべての課題に対する極端な血なまぐさい解決法の嗜好」(580ページ)が徹底して描かれる。誕生から10月革命までのスターリン前半生は,後半生を扱った前著『スターリン 赤い皇帝と延臣たち』(白水社,上:[isbn:9784560080450],下:[isbn:9784560080467],2010年2月)の続編である。
グルジア公文書館の資料を読み解き,スターリンの悪行のいくつかはレーニン公認(銀行強盗はレーニン=ボルシェビキの資金源)であり,「スターリン主義はレーニン主義の歪曲ではなく,その発展だった」(583ページ)ことを暴く。レーニンの遺言でスターリンの書記就任に懸念を表明したのは事実だったとしても,「もしもレーニンが政権初期に,カーメネフのもっと穏健な路線を打ち負かし,あのように無制限で絶対的な権力のための機構をつくり出さなかったならば,スターリンはありえなかっただろう」(580ページ)。スターリンがスターリンになったのはレーニンその人に負うという。
世界最初のマルクス主義を標榜する政権はイデオロギーの祭壇にその後数百万の犠牲者を捧げることになる。
辺境のグルジア人で靴職人の息子が女遍歴を重ね独裁者の階段を一歩一歩上がっていく。それが革命家になるのだ。
枕頭での分厚い本書の読書は腕に大きな負担を強いたが,スターリンの実像に触れた圧倒的な追力は数週間本書に向かわせてくれた。
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