343ロンドンの「エコノミスト・ウオークス」

日経新聞(2010年7月18日付け)「ロンドン,偉人たどる歴史の小道」をスクラップした。ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)のイアン・プレストン教授が2005年に考案したという,経済学者が通ったカフェやら旧居などを辿る散歩コースである。農村地帯を散策する「フット・パス」のロンドン版だ。
記事では,ベンサムの名を冠したパブ,マルクスが日参した大英博物館とロンドン亡命時の初期に住んだアパート,中華街付近にあった社交クラブ「トルクス・ヘッド」,スミスが『国富論』の草稿を書いたカフェを紹介している。
記事を手がかりに調べてみると,いたってシンプルな Economist walks around London: Follow in the footsteps of some of the world's greatest Economists が見つかった(→http://www.ucl.ac.uk/economics/about/economists/Economistwalks)。
6つのルートに分けて地図入りで紹介している。

  • Walk No. 1: Bloomsbury
  • Walk No. 2: Soho
  • Walk No. 3: Holborn and Westminster
  • Walk No. 4: City of London
  • Walk No. 5: Hampstead
  • Walk No. 6: Kensington, Mayfair and Marylebone

1998年にロンドンに行ったときには,残念なことに「エコノミスト・ウオークス」はなかった。持っていったのは,マルクス没後100年を記念して発行された,A・ブリッグス著(大内秀明監修・小林健人訳)『マルクス・イン・ロンドン――ちょうど100年前の物語――』(社会思想社,1983年12月30日発行)。これは前年の6月30日に BBC2 で放送された「K・マルクス・イン・ロンドン」をもとにしたものだった(ちなみに D・マクレラン『マルクスの遺産』も BBC がまず出版し,それをもとに数回のテレビ番組にした)。ロンドンの都市空間と歴史空間にマルクスを配し,ロンドン時代(マルクス31歳から34年間)のマルクスを追ったものだ。マルクスゆかりの場所や建物,旧居を写真と地図で紹介しており,すべてではないが大部分実見することができた。
Walk No. 2: Soho で紹介されている「ディーン通り28番」のマルクス旧居は現在はレストラン「Quo Vadis」として残っている唯一の建物である(マルクス旧居跡としては Walk No. 5: Hampstead にグラフトン・テラスとメイトランド・パークロードが出てくる)。青地のプレートがかかっているとある。これは大ロンドン市議会が取り付けたもので,「カール・マルクス(1818-1883),ここに1851年から1856年まで居住」と書かれているはずだ。正しくは1850年からなのだが,そのままになっているのだろうか。