1439大木毅著『独ソ戦——絶滅戦争の惨禍——』

書誌情報:岩波新書(1785),xx+248頁,本体価格860円,2019年7月19日発行

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

  • 作者:大木 毅
  • 発売日: 2019/07/20
  • メディア: 新書

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独ソ戦は戦闘だけでなく,ジェノサイド,収奪,捕虜虐殺の「人類史上最大の残戦」・「人類史上最大にして,もっとも血なまぐさい戦争」(「はじめに」)だった。独ソ戦は,かたやロシアを「ユダヤ的ボリシェビズム」と規定し「みな殺しの闘争」(ヒトラー)の世界観戦争とかたやコミュニズムナショナリズムを融合させかつてのナポレオンの侵略を退けた「祖国戦争」になぞらえファシストの侵略者からロシアを守る「大祖国戦争」(スターリン)だった。

本書は,ドイツのいくつかの作戦計画と独ソ両国の戦闘陣容の分析から,作戦目標を分散させてしまったドイツにたいして,「縦深戦」のような用兵思想を作戦術として駆使したロシアに軍事的勝利の必然を詳述している。「作戦術を応用した連続攻勢により,作戦次元から戦略次元の勝利を導こうとしたソ連軍が,単一作戦のレベルでしか思考できなかったドイツ軍をうわまわった」(179ページ)。

独ソ両国における通常戦争の歯止めをはずし,犯罪行為の蔓延によって,「独ソ戦の最終局面は,空前,そして,今のところは絶後である巨大な暴力に染め上げられていく」(202ページ)。

「新書でスタンダードな独ソ戦通史」(「おわりに」)は,戦闘だけでなく,「ジェノサイド」,「収奪」,「連行」を「実践」した日本に跳ね返ってくる。

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