書誌情報:中公新書(2274),xii+318頁,本体価格900円,2014年7月25日発行
- 作者:横手 慎二
- 発売日: 2014/07/24
- メディア: 新書
- -
ロシアにおいてスターリン(1879.12.21 or 1878.12.18-1953.3.5) にたいしてすくなくとも語句博非道な独裁者としての評価だけではないという。フルシチョフのスターリン批判(1956年2月の第20回共産党大会演説)とゴルバチョフのそれを踏襲する演説(1987年のロシア革命70周年記念演説)以後も,ソ連崩壊後のロシアにおいても「スターリン擁護派と糾弾派は,相変わらず厳しい対立の中にある」(294ページ)。
ヨシフ・ヴィッサリオノヴィチ・ジュガシヴィリ(愛称ソソ)時代からスターリン(1910年代前半からの変名)を追い,「スターリンを通じてロシアという国を理解し,ロシアという国を通じてスターリンを理解しようとする試み」(vページ)は,党組織論と民族問題の専門家の独裁者への歩みを明らかにする。スターリン個人とロシア革命前後からの内外情勢との絡みのなかでソ連が形作れてたことがよくわかる。
当面した重要課題である対外関係,経済政策,農民政策を遂行することと相まって,「ソヴィエト・ロシアでは,非常に早い時期から共産党が国家機関を支配する仕組みを内部に創り出した」(144ページ)ことが,スターリンをスターリンたらしめたのだろう。
ここで描かれたスターリン像はソ連・ロシアという時代と場所と無関係に一般化できないことを教えている。「スターリンを知らずして,ロシアは語れない」(帯の惹句から)。
- 関連エントリー
- 三宅正樹著『スターリンの対日情報工作』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20101029/1288363439
- サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ著(松本幸重訳)『スターリン 青春と革命の時代』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100720/1279636658
- フランソワ・フュレ著(楠瀬正浩訳)『幻想の過去――20世紀の全体主義――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080121/1200908606
- エレーヌ・カレール=ダンコース著(石崎晴巳・東松秀雄訳)『レーニンとは何だったか』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20070426/1177579843
- 1年前のエントリー
- マイケル・ウェイン著(鈴木直監訳長谷澪訳)『ビギナーズ『資本論』』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20140409/1397051785
- 2年前のエントリー
- 3年前のエントリー
- (再録)新MEGA(マルクス・エンゲルス全集)――その編集・刊行状況と日本人研究者の参画――→https://akamac.hatenablog.com/entry/20120409/1333979721
- 4年前のエントリー
- 小林昇著作目録ブログ版(1973)→https://akamac.hatenablog.com/entry/20110409/1302355940
- 5年前のエントリー
- 『IDE現代の高等教育』第519号(2010年4月号)→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100409/1270825642
- 6年前のエントリー
- 大学犬はなちゃんの日常(その112)→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090409/1239270539
- 7年前のエントリー
- 学術研究フォーラム編『大学はなぜ必要か』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080409/1207734289
- 8年前のエントリー
- 石崎津義男著『大塚久雄 人と学問――付 大塚久雄「資本論講義」――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20070409/1176103348