書誌情報:講談社現代新書(2620),229頁,本体価格900円,2021年6月20日発行
現代を扱った第3巻の「漂流」([isbn:9784065290125]:関連エントリー参照)に続いて,シリーズの最初に出た第1巻の『真説』を読んだ。第2巻の『激動』([isbn:9784065265697])は最後に読む予定だ。
かつての政治や大衆運動に大きな影響力をもった戦後から1960年までの左翼の歴史を,日本社会党と日本共産党の動向を中心に論じており,第3巻に比べると池上の発言の多い。
スクープを連発してきた『赤旗』は,佐藤にかかれば「(政党から:引用者注)独立性のない新聞」(34ページ)であり,天皇制には党としては反対するが連合政権を組んだら賛成するという「二重構造」(123ページ)・「不誠実な態度意外の何物でもない」(124ページ)である。平和革命路線も「根っこの部分では依然として暴力革命の旗をおろしてい」ない(140ページ)の見立ても「日本共産党の本質はスターリン主義党」(229ページ)とする断定と無関係ではない。
池上が「1956年という年(ハンガリー動乱を指す:引用者注)を境に日本の左翼の中で大混乱が起きた。それが数年後の新左翼登場を準備した」(173ページ)と言う時,ソ連あるいはスターリンの絶対視から大きな転換点をなしてもおり,大局観として間違っていない。
「構造改革派の「天才マルクス兄弟(上田耕一郎,不破哲三兄弟のこと:引用者注)」(177ページ)やら「宮本(顕治:引用者注)の陰険さと執念深さの現れ」(180ページ)やら「社会党という政党は真ん中に社会主義協会があって,さらにその左に新左翼がいるというような不思議な政党」(196ページ)と,俗と正論が入り混じる左翼論が「真説」となっている。
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