1051松尾秀助著『琥珀色の夢を見る――竹鶴政孝とリタ ニッカウヰスキー物語――』

書誌情報:朝日文庫(ま37-1),252頁,本体価格600円,2014年9月30日発行

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同名の単行本(PHP研究所,2004年5月,[isbn:9784569633527])に削除(第8章と第9章)・加筆(新たに第8章)したもの。「マッサン」を睨んでのことだが,政孝・リタ夫妻物語,ニッカ物語として素直に読める。
スコットランドがらみでは,いずれもアダム・スミスと関連し,政孝がかつて受講したグラスゴー大学に応用化学専攻学生対象の「タケツル・アワード」を創設したこと,リタの愛唱詩がロバート・バーンズ――「蛍の光」の原曲 Auld Lang Syne の作詞者で,スミスの親しい友人――だったことを知った。
また,ウイスキーの語源として,ラテン語で「命の水」を意味する「アクア・ヴィテ」がゲール語で「ウシュク・ベーハー」といい,それが「ウスケボ」となり「ウイスキー」になったことをさりげなく紹介している。
戦後まもなくニッカが朝日麦酒傘下になったときの社長・山本為三郎柳宗悦濱田庄司らの民芸運動を支援するなど企業メセナの嚆矢ともいえる活動をしていたことも知った。ウイスキーにはシングルモルト,ブレンデッド,ブレンデッドモルトの3種類あることや酒税法改正に翻弄されていた避けがたい酒事情はすんなり頭に入った。
いまやジャパニーズ・ウイスキーはブランドになりつつあるという。よく行くスーパーには「竹鶴ピュアモルト」が陳列してあった。バレンタイン・コーナーにもニッカがあった。政孝愛飲の水2,ウイスキー1の水割りを飲みたくなった。