書誌情報:講談社現代新書(2667),187頁,本体価格880円,2022年7月20日発行
第1巻の『真説』([isbn:9784065235348])および第2巻の『激動』([isbn:9784065265697])に続く,ふたりの著者による左翼史シリーズ第3巻であり,「左派が弱体化し漂流する歴史」(池上,19ページ)にあたる1972年以降から現代までが対象である。
「あさま山荘」事件,1970年代の労働運動の頂点と退潮(=社会党の凋落),本書の中心となる80年代〜90年代の国鉄解体とソ連崩壊(新自由主義の始まり),90年代からのポスト冷戦時代から現代までを概観し,左翼の漂流と特徴づける。
「日本共産党はソ連崩壊後に組織保全,拡張をひたすら頑張ってきたおかげで生き残りには成功したものの,そうすると今度は,革命が重荷になってきてしまった」(佐藤,158ページ),あるいは,ウクライナ戦争について,「日本共産党が,「我々はいかなる戦争であろうと反対する。今回の戦争はアメリカ帝国主義の尖兵の役割を果たしているウクライナと,もう一つの帝国主義であるロシアが衝突しているだけであって,両国の民衆,プロレタリアートとは何ら関係ない」と堂々と言えていれば左翼政党として生き残るチャンスはあったでしょう。しかし,そうしなかったことで彼らはもう反戦政党ではなくなった」(佐藤178〜9ページ)とする。革命をやめ,反戦をかかげない共産党の存在理由はどこにもないだろう。
「すべての戦争は民衆にとって等しく悪なのであり,反対すべきもの(後略)」(池上,182ページ)にたいし,「戦争であろうと環境問題であろうと,「労働者階級にとってそれは何を意味するのか」という問題設定からすべては始まります。しかしそういう問題設定が,今の日本社会からは失われている」「左翼思想を成り立たせる土台自体が崩壊している」(佐藤,同上)と言う。自分の主張を言っているだけで噛み合っていなかった。
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