1739鎌倉孝夫・佐藤優著『資本論を読破する』

書誌情報:文藝春秋,709頁,本体価格7,000円,2023年9月30日発行

「20世紀の日本が誇る知的遺産である(実際にアメリカやカナダでは宇野経済学についての研究書がいくつも出ている)宇野弘蔵の知的遺産が21世紀に途絶えないようにすること」(「はじめに」5ページ)を目的に,『週刊金曜日』主催の『資本論』講座のうち,同第1巻分全18回をまとめたもの。
資本論』第1巻の構成にしたがい,その概説と宇野理論とのかかわり,『資本論』の現代的意味などを話し言葉で大著に仕立てた。『資本論』における自然科学の例解について,それはあくまで「類比,アナロジー」だとし,「実は宇野派も,正統派(マルクス主義経済学)も,あるいは平田清明さんたちの市民経済学派(市民社会派のことか:引用者注)の人もしません」(149ページ),平田清明は『資本論』の一番いいところはこの領有法則の転回だとしているとしていた(635ページ)。もっとも後者はあとで「領有法則の転回論が正しいという組み立てはしないほうがいい」(638ページ)と批判されることになるのだが。
労働の二重性論,ベンサム論,労働者窮乏化論,未来社会論などの理解では必ずしも著者の意見とは同じではないが,「『資本論』をめぐる対話」の「活性化」には共感している。