書誌情報:大修館書店,x+212頁,本体価格2,000円,2022年9月1日発行
羽球バドミントンは,イングランド南西部にある地名に由来する。1873年から翌74年にかけて普及した球技で,バトルドア・アンド・シャトルコックという球戯が元になっている。バドミントンには「バドミントン・ハウス」があり,ボーフォート公爵であるサマーセット家が住んでいるという。
本書はバドミントン経験者の著者による,バドミントン競技の起源から普及,国際的展開,技術の変遷を論じた本格的なバドミントン論であり,バドミントンを対象にしたスポーツ論である。卓球での38mmから40mm球への変更(2000年)や21ポイント制から11ポイント制への変更(2001年)があったように,バドミントンでもサイドアウト制(サービスポイント制)からラリーポイント制になった(2006年)。国際化・グローバル化はルールの変更だけでなく,国際組織の役員やメンバー構成や国際大会の設立が契機となっている。
オリンピック大会にはミュンヘン大会(1972年)でデモンストレーション種目となり,女子シングルスでは中山(旧姓高木)紀子が優勝した。2つの国際組織の分裂をはさみ,ソウル大会(1988年)で2度目のデモ種目を経て,バルセロナ大会(1992年)で正式種目となった。男子ダブルスで優勝した朴柱奉(Park Joo-bong)が日本ナショナルチームの指導に加わり,現在にいたるバドミントン強国日本を牽引してきたことはよく知られている。
「日本における競技としてのバドミントンは,1919年以降30年代における名古屋や大阪,神戸,横浜YMCAでの講習から広まったようで,1933年の規則書が残っています」(日本バドミントン協会→https://www.badminton.or.jp/history/)。それもあってか,本書では日本のバドミントンの普及については詳しくない。『バドミントンガゼット』(1934年12月号)に触れ,横浜カントリー・アンド・アスレティッククラブと神戸リガッタ・アンド・アスレティククラブとの対抗戦の記事を紹介している。また,「当時の日本ではYMCAやバドミントン用具の製造販売会社であるナルトスポーツによって,日本人によるバドミントンの活動も行われていた」(94ページ)としている。
日本におけるバドミントンの歴史と独自のルールで進化しているパラ競技については本書からは省かれていた。
著者のお名前「鵤木」は「いかるぎ」と読む。評者の別のエントリー「難読名字」で触れる予定だ。
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