1211江上敏哲著『本棚の中のニッポン――海外の日本図書館と日本研究――』

書誌情報:笠間書院,296頁,本体価格1,900円,2012年5月25日

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海外における日本研究・教育をサポートする「日本図書館」の蔵書や活動などを紹介するポータル本であるとともに日本から資料・情報を提供・発信するかの提言本でもある。日本について学ぶ学生や日本研究者のために日本語の本,日本について書かれた本や情報を整理・提供する大学図書館・研究図書館・専門図書館が対象である。マンガやアニメも含まれる。
欧米では日本研究・教育の退潮傾向が目立ち,日本研究をおこなってきた大学の研究所・学科,研究プログラムが統合・削減・閉鎖されることも,研究者や専門職の減少も特徴という。コアな研究に欠かせないデジタル資料としての日本情報の少なさ・見えにくさがあり,「紙」に頼らざるをえない状況もある。そのなかで欧米で日本語「熱」があるのはマンガ・アニメなどのポップカルチャーである。
ライブライアンの提言は明解である。ポップカルチャーのニーズに応えるレファレンス・ツールやインターネットへのナビゲートを整備する,学際化・グローバル化に対応するのであればデータベースやウェブサイトの設計を見直して敷居を低くする,である。
インバウンドが史上最多となったと浮かれているどころではないのだ。