073経済教育学会編『経済教育』第26号

専門教育に関する学会は,意外と少ないように思う。とりわけ社会科学の領域では経済教育学会は唯一といっていいのではないか。法学教育学会,政治学教育学会,経営学教育学会などは寡聞にして聞いたことがない。経済教育学会(2003年11月に名称変更)はもともと経済学教育学会として1985年に産声をあげた。「広く経済に関する教育(経済学・経営学会計学,および商業・消費者教育などを含む)の目的・内容・方法・評価・制度を調査研究し,会員の教育者・研究者としての力量を高め,社会全体の経済的教養水準の向上に寄与し,もって経済教育をより良いものにしていくことを目標」(会則より)としている。評者は設立以来の会員であり,ここ10年ほどは名ばかりの役員(=幹事)をしている。
先日(2008年1月11,12日)東京で開かれたOECDの非公式教育大臣会議では,大学など高等教育機関の学習成果をどのように評価するかについて調査研究をすることで合意した。2009年度末までに結論をまとめるという。自然科学の諸学会では学会開催のおり,教育に関する分科会がいくつか設けられると聞く。経済教育学会は「経済に関する教育」の学会として独立しており,日本で貴重な存在であろう。
毎年12月に全国大会(2008年は12月6,7日に亜細亜大学で開催予定),毎年3月に春期研究集会(今年は,2008年3月26,27日に日本大学経済学部で開催予定)が開かれている。

最新号である『経済教育』第26号,2007年12月,は以下の内容だ。

ジャンル 著者 所属 タイトル
シンポジウム 経済教育のいまを問う 渕上勇次郎 高崎商科大学 大競争時代の大学運営をめぐって
- 猪瀬武則 弘前大学 経済教育は合意できるか?――目標・内容・方法に亘った議論を――
論考 賀村進一 帝京大学 導入経済学の任務と授業での留意点
- 島岡光一 埼玉大学(名) 「童戯」と経済教育――再生産論としての「関係力経済学」へ――
- 井本正人 高知女子大学 大学における学習支援システムとしてのeラーニングのアウトカム
- 植木恒幸・藤本訓利・陸亦群 日本大学 通信教育課程におけるメディア授業の実践とその課題
- 斎藤 清 兵庫県立大学 複数変量を駆使した経済情報教育
- 水野英雄 愛知教育大学 リスクを教える投資教育
- 箕輪京四郎 元横浜商業高校 株について教えるべき内容と姿勢
- 山田博文 群馬大学 経済社会の変化と金融経済教育の課題
- 越田年彦 東京都立南多摩高校 経済的市民育成の教育から資本主義的価値理念を問う教育へ
- 八尾信光 鹿児島国際大学 資本主義発展の諸段階をどう捉えるか
- 田中 淳 都立産業技術高専・都立航空工業高専 クラス担任による社会人入門講座と学生のキャリアデザイン――高等専門学校の学級担任によるキャリア教育の一例――
- 長谷川博 富山商船高専 実際の事例を教材としたケースメソッド型授業の試み
- 保立雅紀 東京工業大学附属科学技術高校 特定の産業・企業に着目した技術と産業に関する経済教育
- 淺野忠克ほか15名 山村学園短期大学ほか 経済リテラシーに関する日米大学生の国際比較――第7回生活経済テストの結果を中心として――
投稿研究論文 佐々木謙一・山内康弘 大阪商業大学・滋慶医療経営管理研究センター 経済学検定試験を活用した公務員試験対策について
- 加納正雄 滋賀大学 NCEEの経済教育と意思決定――価値観にかかわる問題に関して――
資料分析 奥田佳正 大阪府立狭山高校 特例国債赤字国債)発行に関する教科書等の記述について
書評 山内康弘 滋慶医療経営管理研究センター 佐々木謙一著『経済学の基礎学力――学びはドリルからはじまる――』
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