256春江一也著『ウィーンの冬』(上)(下)

書誌情報:集英社文庫(は-27-6, 7),(上)353頁;(下)345頁,本体価格各619円,2008年11月25日

ウィーンの冬〈上〉 (集英社文庫)

ウィーンの冬〈上〉 (集英社文庫)

ウィーンの冬〈下〉 (集英社文庫)

ウィーンの冬〈下〉 (集英社文庫)

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集英社インターナショナル版(2005年11月刊)の文庫版だ。
プラハの春』は68年の激動のプラハを,『ベルリンの秋』はその直後の東ベルリンでのナチス残党を,ラブロマンスを軸にしながら冷戦現代史を描いた。本書は,さらに時代を進め1990年代前後の冷戦終結を舞台にしながら,国際都市ウィーンでの日本のカルト宗教団体(本書ではカルマ神理教)と北朝鮮による「ハルマゲドン」工作を焦点としている。
ウィーンでの北朝鮮とカルト宗教団体の策動と協力,ソ連解体前後の核爆弾を含む兵器の売買など現代史で進行した事実を背景としているだけに,フィクションといいながら日本の国際諜報活動の脆弱さを告発するものとなっている。舞台はたしかにウィーンだ。Eine Reise in das Innere von Wien.
上巻半分過ぎまで序奏が続き,その後の展開は一気だ。本書で中欧三部作は完結だ。主人公堀江亮介は次作ではどこに赴き,なにを発見するのか。