書誌情報:藤原書店,440頁,本体価格3,800円,2010年10月30日発行
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人工衛星は天気予報や無線通信,カーナビ,地殻変動観測などに使われ「平和的」技術のように思われている。ソ連のスクートニク打ち上げ成功以来の米ソ冷戦・軍拡競争の恩恵を受けたものであるのは,打ち上げ技術そのものがミサイル技術からきていることからもわかる。インターネットの誕生も冷戦による軍事戦略と絡んでいたことはよく知られている。日本のH-IIロケットを使う情報収集衛星(IGS)は偵察衛星にほかならない。
日本の加圧水型軽水炉(PWR)はもともと原子力潜水艦用の動力だったし,高速増殖炉はプルトニウム爆弾の原料生産用に開発された原子炉である。
現代技術史研究会は故星野芳郎主宰の研究会の流れを汲む。武谷三男の「技術とは人間実践(生産的実践)における客観的法則性の意識的適用」という「適応説」に立つ。技術の社会的機能・技術の構造(技術の原理と展開過程)・生産技術・技術と社会との関連を共通の問題意識として,技術の目的を問い自らの実践を貫く技術者の視点が際立つ特徴だ。
価値中立的でない技術を,われわれの生活圏(住まい,食べもの,水,家電製品,車,医療など)と産業社会(材料,エネルギー,輸送,コンピュータ,大量生産システム,軍事など)で検証し,廃棄物問題や事故に直面する危うい「ネガ像」に写しとっている。
事典風でありながら技術の位置づけ物語としての共同研究の一貫性は保たれているように思う。NHKスペシャル「私たちは核兵器を作った」(2010年12月19日放送→http://www.nhk.or.jp/special/onair/101219.html)のロッキー・フラッツ(中國新聞「21世紀 核時代 負の遺産」→http://www.chugoku-np.co.jp/abom/nuclear_age/us/020324.html)は,アメリカだけの問題ではない。
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