298馬場宏二著『経済学古典探索――批判と好奇心――』

書誌情報:御茶の水書房,xi+384+vii頁,本体価格3,800円,2008年12月20日発行

経済学古典探索―批判と好奇心

経済学古典探索―批判と好奇心

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ペティからマルクスにいたる経済学の流れを,資料操作を批評基準とした経済学発達史の本。スミスのペティ隠し,スミスの犯罪,マルクスの早とちり,スミス・マルクスの資料操作など耳目をひく言葉――『マックス・ヴェーバーの犯罪』にならったそうで,その「偶像破壊的姿勢」・「推理小説的構成」を高く評価している――とともに,古典への聖典化への挑戦だ。マルクスがマカロックを理不尽に罵倒し,マカロックの評価に影を落としたとする考証やスミスが主要な文献を意図的に隠蔽したことなどシリアスな古典探索だ。
ただ,マルクスのマカロック評価にかかわって,MEGA編集の「マルクス無謬説的注解」・「MEGAを背景にした再神格化」(81ページ)とする意見には留保しておく。
経済学史(経済思想史)の領域ではなにも「古典崇拝」・「聖典化」論者ばかりではない。資料操作の批評基準は「しごく当たり前」のことであり,著者の「批判と好奇心」は大いに歓迎されるだろう。