書誌情報:岩波新書(1235),x+212+11頁,本体価格760円,2010年3月19日発行
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世の中に たえてオカマのなかりせば 人の心はのどけからまし
異性愛が自然・正常だとすれば,同性愛は不自然・異常となる。異性愛を自然・正常とみなすかぎり,同性愛は異分子となる。
19世紀末から同性愛を犯罪や病気とみなす時代があった。アメリカでは1970年代になってようやくソドミー法――同性愛行為に対する刑事犯罪法――を廃止する州が出現し,連邦最高裁がソドミー法に違憲判決を出すまでになった(2003年)。さらにアメリカ精神医学会の診断マニュアルから完全に削除したのは1983年にさかのぼる。WHO(世界保健機構)が国際疾病分類(IDC)リストから同性愛を外したのは1990年である。
犯罪化と病理化から脱犯罪化と脱病理化へ。同性愛をひとの性的指向とみなし,それにもとづく差別を禁止する。性的マイノリティの権利を認める動きはコミュニティ論や市民社会論とも大いに重なっている。
日本における男の「オネエキャラ」は歓迎されても,女の「オニイキャラ」は露出が少ない。日本は同性愛に寛容だというが実は異性愛主義の表れである。
結婚=生殖イデオロギーやジェンダー規範はホモフォビア(同性愛嫌悪)と結びついていることが多い。同性愛者がホモフォビアから自由になるとき,異性愛者にとっても生き方の多様性を可能にする。
在原業平が桜に込めた思いと同じように,同性愛があるからこそ人間社会が成り立つと考えたい。
同性愛者が切り取った社会の断面は,セクシュアリティを超えて普遍性をもつ問題提起の意味を持っている。
「おわりに」で触れているように,「彼氏(彼女)いる?」と聞くことがある。同性愛者がいないことを前提にしているわけだ。「パートナーはいる?」あるいは「恋人いる?」が正解なのだろう。つい最近まで自己紹介するときに,「オカマではなくアカマです」と言い,受けを狙った自分を恥じるばかりだ。
辛淑玉の跋文がいい。「「気持ち悪い!」「自分には関係ない」そう思ったあなたにこそ,読んでほしい」。
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