書誌情報:山川出版社,236頁,本体価格1,500円,2011年9月30日発行
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アニメは『世界名作劇場』で放送された作品ばかりだ。大規模な移民と社会階層の変動の時代だった19世紀を舞台に,ヨーロッパ(フランス,ベルギー,スイス,イギリスなど)から始まり,アルゼンチン,オーストラリア,アメリカを経て,再び20世紀のオーストリア,ドイツ,イタリアに戻ってくる。作品(括弧内は原作)は,『レ・ミゼラブル』・『少女コゼット』(ヴィクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』),『フランダースの犬』(ウィーダ『フランダースの犬』),『家なき子レミ』・『ペリーヌ物語』(エクトル・マロ『家なき子』,同『家なき娘』),『アルプスの少女ハイジ』(ヨハンナ・シュピーリ『ハイジ』),『小公女セーラ』(フランシス・バーネット『小公女』),『母をたずねて三千里』(エドモンド・デ・アミーチス『クオーレ』),『家族ロビンソン漂流記――ふしぎな島のフローネ――』(ヨハン・ダヴィト・ヴィース『スイスのロビンソン』),『トム・ソーヤーの冒険』(マーク・トウェン『ドム・ソーヤーの冒険』),『トラップ一家物語』(マリア・フォン・トラップ『トラップ一家合唱団物語』,ロバート・ワイズ監督『サウンド・オブ・ミュージック』【映画】)である。
それぞれ物語のあらすじ,原作との対比と時代背景を紹介し,孤児と孤児院,産業革命と移民,フランス共和制の歴史,スイスの連邦制,格差社会とジェンダー,イタリア移民,オーストラリア移民,ジャクソニアン・デモクラシー,多民族国家ハプスブルク帝国などなど「アニメから世界史がわかって,受験を控えている人は読めば大学入試も通るし,サラリーマンの方には,同僚との会話のネタができる」(「はじめに」)。すくなくとも評者にとっては学生との会話のネタが増えた。
分析は「アニメの表現をとおして見え隠れする歴史の姿を紹介」(第7章から)したもので,「学術的な批評理論」(同)は含まれていない。
「楽しくなければ,歴史じゃない」との編者(「チーム西洋史監督」兼「大阪大学文学部ただの教授」)の思いが貫いているようで,楽しいだけじゃない歴史の物語をじゅうぶんくみ取った一書になっている。
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