709大谷和利著『スティーブ・ジョブズとアップルのDNA――Thing different. なぜ彼らは成功したのか?――』

書誌情報:株式会社マイナビ,206頁,本体価格1,300円,2011年12月20日発行

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Mac初心者だった頃,「私設アップル・エバンジュリスト」である著者の本を何冊か読みあさったことがある。なかでもハイパーカードの解説書は愛読した。
スティーブ・ジョブズに注目しながら,彼の考えを生かした製品のみならず「アップルというシステム」をつくりあげたとして3つにまとめている。(1)半導体,OS,ハードウェア,ソフトウェア,販売システムにいたる垂直的統合型ビジネスモデル,(2)それを可能にする事業分野ごとの複数副社長体制,(3)人種・国・人々への異なるマーケティングではなく全世界共通の仕様とデザインを持つユニバーサル製品,とする。ジョブズの言葉とアップルのビジネスを論じているのは,ひとりジョブズの偉業としてアップルをみない「アップル・エバンジュリスト」の姿勢がある。
パーソナルコンピュータの革命,広告の革命,音楽の革命,電話の革命,タブレットコンピュータの革命,アニメーション映画の革命,ストアの革命というジョブズが変えた7つの革命は納得だ。
初代iPodの背面ステンレスカバーには新潟県燕三条の金属磨き技術,MacBookシリーズのアルミユニボディ化では入曽精密の技術,iPhone 4 のアンテナ兼用ステンレス切削にはオーエスジーの工具が使われたように,日本の技術とアップル製品との関わりもアップルファンにはこたえられない。小物のデザインも含め純正品へのこだわりもアップルならではである。評者は Air の入った黒い箱を捨てられず,種類入れに転用しているほどである。
ジョブズとアップル。Think different.