503小川浩・林信行著『アップルVS.グーグル』

書誌情報:ソフトバンク新書(137),198頁,本体価格730円,2010年7月25日発行

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ひところ IT といえばデスクトップパソコンやノートパソコンのような専用機器を想定していた。「ウィンテル帝国」も存在した。いまでは携帯電話(なかでもスマートフォン)や iPad のようなスレートと呼ばれる板型機器が主役に躍り出ようとしている。「ポストPC」というそうである。いましばらくマイクロソフトの時代は続くにしても,「ポストPC」の動向から目を離せない。その主役はアップルとグーグルだ。
アップルとグーグルの市場は重なりあっている。ウェブキットやHTML5を広めるという意味では同じ土俵にいるが,アップルの自社OSと自社プラットフォームとグーグルのオープンソースとブラウザ中心主義との競合をどう見るか。著者の見立てではアップルとグーグルとの協調(グーグルップル [Googlepple])の実現可能性が高い,である。
ポストPC時代のOS戦争,閉鎖路線と開放路線,アップルは身体だとしたらグーグルは精神,アップルは道具・グーグルは素材などと両者を対比させつつ,革新的なアイディアや商品に結果するなにかを探ろうというわけだ。その鍵はどうやらグローバルソフトウェア戦略(世界展開をつねに考えていること)と継続的な発展(長期的経営ビジョン)にあるらしい。
PC はアップル製品しか使ったことがなく,アップルのネットワークサービス MobileMe を利用し,さらには iPodiPad への偏執をもち,つねにぐぐって,毎日 Gmail の恩恵をこうむっている身からすれば,アップルとグーグルが創出する世界の一端を知っていていいだろう。